ヒトリゴト

数年放置のヒトリゴト

スプートニクの恋人

セブンイレブンにて夜な夜な(というよりも明け方)読了。
なんだかこの本は、村上春樹ファンにはあまり評価されていないみたいですね。一つの作品としては面白かったと思いますよ。ただ、僕が最近読んだ村上春樹の本と比べると劣るかなって感じはなきにしもあらず。なんてゆーか、中盤辺りで多少読んでて退屈な気はした。突如失踪した「すみれ」を捜索するという部分においてはねじまき鳥クロニクルと同じようではあるが、この作品はもともと「すみれ」を手にしていないし、失踪した「すみれ」を残された人達は、理解しようとしている。その部分は決定的に違う気がした。「こちら側」と「あちら側」という表現があるが、これは本作に限らず、村上春樹の作品に共通するキーワードじゃないかと思う。最後に「すみれ」は「僕」に電話をかけてくるわけだけど、きっと「あちら側」からかけてきたものなんだろう。

ぼくらはこうしてそれぞれに今も生き続けているのだと思った。どれだけ深く致命的に失われていても、どれだけ大事なものをこの手から簒奪されていても、あるいは外側の皮膚だけを残してまったくちがった人間に変わり果ててしまっていても、ぼくらはこのように黙々と生を送っていくことができるのだ。手を伸ばして定められた量の時間をたぐり寄せ、そのままうしろに送っていくことができる。